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『ATTENTION 「注目」で人を動かす7つの新戦略』(ベン・パー)の感想・書評

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基本情報

著者:ベン・パー

訳者:依田卓巳、依田光江、茂木靖枝

解説:小林弘人

出版社:飛鳥新社

ジャンル:ビジネス書、マーケティング

刊行年:2016

ページ数:320

本体価格:1620円

 

評価

面白い(★★★)

 

感想・書評

一般人の行動を研究論文から解説

帯のキャッチコピーに「なぜ、君の偉大なアイデアは日の目を見ないのか?これからは、<注目(アテンション)>を制すものが、夢も市場も手に入れる」とある。

情報過多の時代にビジネス(主に新事業や新製品)で成功するために、いかに注目を集める必要があるか、というテーマだ。

これだけ聞くとよくある話のように思え、実際そうかもしれないが、本書は中身で勝負している。

 

著者は元ニュースサイト編集者で、現在はシリコンバレーの投資家。

丁寧に学術研究を拾って根拠を説明しているところは、しっかり論文でソースを集めるニュースの編集者らしさが出ている。

本書のいいところは、企業や著名人の成功例にとどまらず、一般人の心理や行動パターンの解説が豊富なところだ。

「注目」を集めるというのは一般人を動かすことなので、当然といえば当然だが、ここで論文を丁寧に集めているよさが生きてくる。

 

例)ヒッチハイカーのシャツの色

たとえば48ページで、「ヒッチハイカーのシャツの色を変えて、ドライバーが拾う率は変化するか」という実験を紹介している。

結果は赤シャツを女性ヒッチハイカーが着たとき、男性ドライバーが乗せる率が高かったのだが、これは道路との対比(目に留まる)と、ヒッチハイカーに対する連想(ロマンスを想像させる)があるから、とのこと。

ここから、Webサイトのユーザインタフェースデザインの話(ボタンの色とか)に移っていき、さらに別の研究や事例を引用して補足していく。

だいたいこのようなスタイルである。

 

そのまま実践は難しい

全体的にわかりやすく、納得する点が多々あり、なんとなく思っていたことを裏付けてくれるタイプの本だと思う。

ただ実例が著名人や大企業、またトリッキーな話も結構あり、普通の会社員はそのまま真似しにくい。

キャッチーでわかりやすい象徴的な例だとは思うので、自分なりに解釈すれば多少は使えるだろう。

 

妙な気づきがあった

最後に、「日本もアメリカも一緒だなあ」と思って面白かった部分を少しだけ引用する。

有名ニュースサイト「バズフィード」で人気上位の記事のタイトルが3つ挙げられている(以下が引用)。

 

・アジア人がうんざりする21の質問

・移民の親を持つ子供だけがわかる23の問題
・90年代の雰囲気を完璧にとらえた48の写真

 

アメリカらしく人種問題が絡んでいるものがあるが、タイトルの付け方は日本のWeb記事とあまり変わらない。

おそらくこれは、数字が興味を引きやすいのと、Googleの検索アルゴリズムに対応すると言語を問わず言葉選びが似てくる、ということだと推測した。